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サーチナニュース 2012/03/16(金) 09:52
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0316&f=column_0316_009.shtml
ここが違う日本と中国(20)―人材戦略
大学を卒業しても就職は難しい。
一方で、企業のほうは優秀な人材を確保するために悪戦苦闘する。
こんないわゆる労働市場のミスマッチは中国でも起きており、特に日本では問題の深刻化が目立つ。
企業だけでなく、どこの国も優秀な人材を欲しがる。
しかし、どんな人間を優秀な人材と見なすか、また、どうやって優秀な人材を育成、確保するか。
それらをめぐってはさまざまな違いが出てくる。
そして日本と中国を比較してみると、興味深いことが浮き彫りになった。
第一に、人材戦略と言ったら、日本では基本的に個々の企業や機関が考えることであって、国レベルの議論がほとんどなく、国全体の青写真も示されない。
しかし、中国では人材戦略はまず国レベルで議論され、基本方針と大枠が明らかにされる。
そして地方行政、個々の企業や機関、国民が それを具体化したり、実行したりする。
もちろん、人材の育成や確保に関して個々の企業や機関などもそれなりの方針を決め、実行に移していくが、なにより最も重要視されるのが国レベルのものである。
2010年6月6日に発表された「国家中長期人材発展計画要綱(2010~2020年)」は中国共産党中央と国務院が共同で策定した、人材の育成と活用に関する国の中長期ビジョンである。
この今後10年間にわたる人材戦略の中には、
人材の育成と活用を通して世界の超大国に登り詰めよう
とする壮大な志が見え隠れする。
とにかく以下の宣言に注目してみよう。
「人材はわが国の経済社会発展の第一資源だ」
「わが国は人的資源大国から人材強国への転換を実現しなければならない」
「わが国は人材強国の道を歩まなければならない」
ここまでやらなければならないのか、と不思議に思うかもしれないが、中国にはちゃんとした理由がある。
それは一言でいえば、英才教育を受けて育ったスケールの大きい、ハイレベルの人材もいるが、
国の規模や経済規模に比例した裾野の広い人材(質と数)はまだ備わっていない
という事情である。
中国経済は一見順調な急成長のようだが、豊富で廉価な労働力を武器に、低付加価値の商品を製造・輸出して成長を引っ張ってきたのがその実態である。
特に担い手である労働者の状況を見ると、まさに
「三低(低年齢、低学歴、低賃金)労働者」
が支えている「世界の工場」といっても過言ではない。
しかし、最近開かれた全国人民代表大会での温家宝首相の政府活動報告でも再三強調されたように、中国は持続的な経済発展を目指すなら、産業転換を早急に実現する必要がある。
つまり、より独創的で技術革新を原動力とする産業構造を確立し、付加価値の高い製品を造るということだ。
これは専門家でなくても、一般の人もよく分かることである。
中国でも10数年前から言い続けられてきた。
にもかかわらず、
いわゆる産業転換とか、新しい発展モデルとか、いずれもほとんど進んでいない。
誰でも知っていてやりたいことだが、決して誰でもできることではない。
ますます焦りを募らせていた中国の指導部はついに壮大なスケールを有する人材戦略を策定し全国民に示したのだ。
ここで言っている人材とは、
一定の専門的な知識・技能を持ち、創造的な働きを通して社会に貢献し、人的資源のなかで能力と素質の比較的高い労働者を指す。
そんな人材は2008年には1億1385万人いたが、
15年には1億5625万人、
20年には1億8025万人
にまで増やすことになる。
これだけ膨大な数字だから、見てもピンとこないだろう。
教育や学歴に照らして言うならば、おそらく専門学校以上の教育を受けた人はその対象になる。
中国の大学教育は飛躍的に発展してきたとはいえ、労働者全体を占める大卒者の割合は依然低い。
それを改善するため政府は人材戦略の一環として、
2008年時点の9.2%を順次引き上げていき、
15年には15%、
20年には20%
に達するように進めていく。
こうして大学教育の拡大を通して労働者の質を高め、人材の数を増やすというのは、発展途上国のなかで広く見られるやり方である。
一方、日本はすでに大学教育の拡大期を過ぎており、大学進学率も約50%に到達している。
そのため、中国のように国民の質の底上げを狙いとし、国家主導で、画一的な人材戦略を立てる必要性は低い。
それよりも、むしろ各分野を担う人材の特性を見極めたうえ、バランスのとれた支援策を講じることが求められている。
第二に、近年、日本の企業、特に大企業は外国人従業員を増やしている。
なかで目立つのが、優秀な外国人留学生を積極的に採用するようになったことである。
背景には、企業活動のグローバル化や人事戦略がある。
海外に展開している企業はもとより、国内の企業でも国際化の流れのなかで日本人以外の人材を必要としてきている。
また、「内向き」傾向が強まる日本人若者の不十分なところを補うにも、外国人従業員の積極的採用が必要不可欠となる。
法務省入国管理局の統計によると、2007年に日本で就職した外国人留学生は1万262人と、初めて1万人を突破したが、そのうち中国人留学生は7539人で全体の約4分の3を占める。
その翌年も引き続き増え1万1040人に達し、うち中国人は7651人と全体の約6割だった。
しかし、リーマンショック後の景気後退から影響を受けて、09年には9584人、10年には7831人へと減少、中国人も6333人と4874人にまで少なくなった。
ただし、外国人留学生採用件数の減少は日本企業全体の求人枠が大幅に縮小するなかで起きていることで、実際、日本人採用の減少がもっと大きい。
いずれにして、グローバル化の進行が一段と強まるなか、生き残りをかけた日本企業は熾烈な国際競争を勝ち抜くため、優秀な外国人従業員をどんどん取り入れる以外に方法がない。
こういう認識はこれからも広がっていくだろう。
<< 略 >>
(執筆者:王文亮 金城学院大学教授 編集担当:サーチナ・メディア事業部)
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