2012年3月18日日曜日

ある国の繁栄と崩壊の物語−「ユートピアの崩壊」

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● ナウル共和国



BLOGOS 2012年03月16日 22:17
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ある国の繁栄と崩壊の物語−「ユートピアの崩壊」

 ナウル共和国。
 太平洋に浮かぶ、国土面積がわずか21km²の独立国家でバチカン、モナコに次いで小さく人口も1万人程度しかいない。
 この国がたどった歴史はまるで寓話のように"よくできたストーリー"であり、作り話のように思える。
 しかし、本書で詳しく語られるナウルの物語は純然たる実話です。
 全国民へのベーシックインカム支給、税金はタダ、電気代、病院代も無料、結婚すると新居を国が与えてくれる。
 加えて、国民所得は世界トップレベル。
 しかし、繁栄は長続きせず、富、文化、環境を失い、石器時代に戻ろうとしています。
 ギリシャ問題など比較にならない、現代における史上最大の破綻国として、この小さな共和国は名を残すことになるでしょう。

 この富の源泉はリン鉱石です。
 膨大な時間をかけてアホウドリを始めとする海鳥の糞が堆積されることで生成されるこの資源は、良質な化学肥料の原料となるため高値で取引されます。
 島全土で採掘が可能なこのお宝を彼らはとにかく掘りまくりました。
 その結果、1人あたりのGNPベースで日本が1万ドル弱、米国でさえ1万4千ドル程度だった1980年代初頭に、ナウルは2万ドルを誇るまでになります。

 「リン鉱石立国」として1968年に独立国家となった彼らの繁栄は、無計画な採掘により15年と持ちませんでした。
 採掘できる資源には限りがあることくらい、彼らでも分かってはいたのです。
 リン鉱石で稼いだお金の半分は国民に分配され、残り半分は政府により国外への投資に向かいました。

 国民は一周30分で回れる狭い国土に不要だと思える高級外車を買い漁り、食事は外食しか行わなくなり、海外にショッピングに出向き散財しました。
 驚く事に彼らは働いて稼ぐことを知りません。
 欧州諸国に"発見"される前は主に漁業で自給自足の生活をしていたのですが、イギリスの植民地時代には強制労働に徴用され、そして独立後はリン鉱石の輸出により何もしなくてもベーシックインカムで金が勝手に口座に振り込まれるようになりました。
 リン鉱石の採掘作業を行うのは専ら中国人などの出稼ぎ労働者達であり、小売りや外食店を営むのも外国人達。
 彼らはただ消費するだけでした。
 その結果、富は失っても、いまだにダントツで世界一の肥満国(2008年のWHOの調査によると、国民の79%が肥満)であり、多くの国民が糖尿病で苦しんでいます。
 リン鉱石が枯渇し、国に唯一あった国立銀行も破綻して預金の引き出しも出来なくなった今では、働いて稼ぐ経験をしたことがない彼らは、生きていくには漁業による自給自足の生活に逆戻りするしかないのです。
 かつての遠い祖先が行っていたように。

 政府は何をやっていたのでしょうか。
 先に書いたように、採掘できる資源には限りがあることくらい、彼らでも分かってはいたのです。
 しかも、1990年代から2000年代初頭には掘り尽くしてしまうことが、独立の頃から分かっていたといいます。
 その対策として、政府がやったことは、海外への投資です。
 オーストラリア、ニュージーランド、ハワイなどのホテルやマンションといった不動産をとにかく買いまくりました。
 リン鉱石しか資源がなく、狭く観光にも適さない国家の取り得る選択肢として海外へ目を向けるのはある意味必然だし、それしかないでしょう。

 結局、これも失敗でした。
 財務大臣でさえも、ほとんど金融知識をもたない素人だったため、海外からやってくるあやしげな連中に手玉に取られ、多くの資金が知らぬ間にどこかに消えてしまう始末。
 リン鉱石もダメ、海外投資もダメとなって、ついには国家ぐるみで犯罪を助長する行為に手を出し(マネーロンダリング、不法パスポート発行等々)糊口を凌ごうとするのですが、焼け石に水。
 その上、当然ながら世界的な非難を浴びてしまう。

 ナウルの状況はダイヤモンド著の文明崩壊で語られるイースター島の崩壊の物語を彷彿とさせます。
 ナウルと同じ太平洋の小島イースター島は、無計画な開発と環境破壊を続けた結果として、ついには資源を消費し尽くして文明が消滅してしまい、島民の生活は石器時代に戻りました。
 両者の大きな違いは、イースター島は他の文明と隔絶され閉鎖された空間に存在し、また、森林破壊等が国土に与える影響を科学的に分析・理解できる時代ではなかったのに対して、ナウルは地理的にはイースター島と同じく世界の果てに位置するにせよ、他文明と隔絶するどころかむしろ積極的にグローバリゼーションの波に乗って行き、それに飲み込まれた結果として崩壊に向って行っている点です。
 また、それが持続可能ではないことも彼らには分かっていた(けども止められなかった)という点も見逃せません。
これはナウルだけの問題なのか、考えさせられます。




Wikipediaより。

 ナウル共和国(ナウルきょうわこく)。
 通称ナウルは、太平洋南西部に浮かぶ珊瑚礁のナウル島にある共和国で、イギリス連邦加盟国である。
 国土面積は21km²であり、バチカン市国、モナコ公国に次いで面積が小さい。
 また人口も、国際連合経済社会局人口部の作成した『世界の人口推計 2010年版』によると10,210人であり、バチカン市国、ツバルに次いで人口が少ない。

 現在、人口は10,131人で、住民は、ナウル人が58%、その他の太平洋の島の出身が26%、華人が8%、ヨーロッパ人が8%である。
 面積は21km²。

 アホウドリを始めとする海鳥の糞の堆積によってできたリン鉱石の採掘によって栄えた。
 世界で最も高い生活水準を享受し、税金を徴収されず、医療、教育は無料、年金制度(老年年金ではなくベーシックインカムとして全年齢層に対する給与としての支給)を始めとした手厚い社会福祉を提供していたが、20世紀末に鉱石が枯渇しそれらはすべて破綻、基本的インフラを維持するのでさえ困難な深刻な経済崩壊が発生している。

 かつては漁業と農業で生計を立て貧しいながらも貧富の差もなく温和な生活を送っていた。
 しかしながらリン鉱石の輸出によりもたらされる不労所得が生活や文化を大きく変えてしまった。
 20世紀初頭から末までは鉱石の輸出によって、オーストラリアとニュージーランドを除くオセアニア諸国のなかではもっとも経済的に繁栄し、世界で最も高い国民所得を誇っていた。
 無税で、医療、教育制度は全て無料であり、全年齢層に年金が支給されていた。
 当時はほぼすべての食料品と工業製品の調達はもちろん、政府職員を除くほぼすべての労働者も出稼ぎ外国人に依存しており、国民は働く必要がほとんどない状態だった。
 食事も中国人の経営するレストランで三食済ますといった生活だった。
 貿易依存度は輸出、輸入とも110%という値だった。

 現在は島内の雇用については失業率が90%に達するとされ、2007年に日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』の取材班が訪れた際には、日中の街中を無為にうろつき回る多数の島民の姿が映し出されていた。
 これは1世紀近くにわたりリン鉱石の採掘権のみで働かずに収入を得ていたため、ほとんどの国民が労働を知らず、勤労意欲もないためである。
 これに政府は歯止めをかけようと現在国内の小学校の高学年で働き方を教える授業を行い、将来の国を担う子供たちの労働意欲を確かにしようという対策がなされている。
 ただし企業そのものさえほとんど存在しない上、インフラストラクチャーが整備されておらず、外国企業の誘致さえままならないため、成人男性に関しては何の対策も施せない状況が続いている。

 オーストラリア政府はナウル国民に市民権を付与する旨申し出たが、ナウル政府はそれを保留している。
 経済的には崩壊同然だが、元来楽観的な国民性故に平和な生活が続いている。







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